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5 年に一度だけ開かれるショパン国際ピアノコンクール、この世界最古で最も権威あるピアノコンクールを生で観てみたい!という想いが今年叶った。今回で 4 度目のポーランド・ワルシャワへの訪問であったが、今回はとりわけ格別なものがありこれまでに増してエキサイトしていた。
購入出来たチケットの1枚は本選最終日のもの、そしてもう1枚はコンクール受賞者のコンサートのもの。この2日間 (2005 年 10 月 21 日 &
10 月 23 日) のことについてリキャップしてみた。
尚、第 15 回ショパン国際ピアノコンクールの結果は下記のようになった。

1
Rafał Blechacz Poland
2
N.A.
3
Dong Hyek Lim & Dong Min Lim South Korea
4
Shohei Sekimoto & Takashi Yamamoto Japan
5
N.A.
6
Ka Ling Colleen Lee Hong Kong
Best Concerto Performance Rafał Blechacz Poland
Best Mazurka Performance Rafał Blechacz Poland
Best Polonaise Performance Rafał Blechacz Poland
 

ショパンコンクール期間中、ワルシャワの街の至る所にショパンコンクールのポスターやスポンサー企業のライトポスターが見られた。

本選最終日の午後2時頃、ショパンコンクール会場となっているFilharmonia Narodowa (ナショナルフィルハーモニックホール) 横には国営テレビ局TVPが準備を始めていた。但しまだ本番まで数時間あったためこの時間周辺はまだ静か。
 
辺りがそろそろ薄暗くなってきた夕方5時半頃会場に入った。この時間観客が続々と入館。ホール内は既にもの凄い熱気!もうわずかで本選最終ステージが始まる…何だかまだここにいることが信じられないような感じだった。
Filharmonia Narodowaに入ってすぐのエントランスホールには、第15回ショパンコンクール記念切手と記念ハガキのセットが売られており数セット購入した。その1枚1枚にとても丁寧に
"XV Międzynarodowy Konkurs Pianistyczny im. Fryderyka Chopina 21100518" と入った記念消印スタンプを押してくれた。上の階にはたくさんのお土産コーナーのようなものがあったが、販売されているものの中では結局この記念切手と記念ハガキが最も良い気がした。
 
ホールは思っていた程大きくなく、ちょうど日本でよくある小ホールくらいの大きさといった感じ。但し内装は非常に素晴らしい。ワルシャワフィルハーモニーのメンバーはステージ上でスタンバイしていた。僕の席は1階のちょうどセンター付近であった。席に付いてビックリ!なんと僕のすぐ隣に座っていたのは、日本でも有名なあの音楽評論家・ピアニスト。少し会話を持てラッキーだった。

観客も皆、このコンクール本選の最終ステージという壮大なイベントを目前にし会場には益々熱気が立ち込めていた。やがてピアノかパイプオルガンの低和音が数回鳴り響き(これが鳴るともうすぐ本番開始ということで着席指示のようなことを意味していた)、少々空いていた席もすぐに満席になった。この日の本選最終ステージのファイナリストは3人; 1) ロシアのAndrei Yaroshinsky; 2) ポーランドのRafał Blechacz, そして 3) 韓国のDong Min Lim. この日は皆同じくピアノ協奏曲第1番であった。(正直第2番の演奏も聴ければ…)

Yaroshinskyが現れ、オーケストラの前奏が始まった。何だかこちらまでドキドキしてきていた。とうとうこの瞬間が始まったか!

そして次に韓国のDong Min Lim. 個人的に彼の演奏スタイルはとても詩的で且つメリハリもあり気に入った。(予め配布されたプログラムではポーランドのRafał BlechaczがYaroshinskyの次の演奏者になっていたようだが、始まると2番目に出てきたのはDong Min Limであった)
 
演奏者が替わるとピアノも替えられるが、その交換風景も結構面白かった。前者の使用したピアノはステージ下にゆっくりと沈んで行き、やがて次の演奏者のピアノが下からステージ上に昇って来る。
本選最終ステージの最後の演奏となったBlechaczの前に、少々長めのインターミッションがあった。 この30分の間にラウンジに展示されているショパンに関するさまざまなアイテムを見て回った。毎年ポーランド南西部の温泉地、ドゥシュニキで開かれているショパンフェスティバルについては特に詳しくディスプレイされていた。その他には各国で発行された珍しいポーランド/ショパンの記念硬貨や以前流通していたショパンの5,000ズウォティ紙幣も見られた。
 
ラウンジの一角にはポーランドの彫刻家 A. Karnyのショパンの像もあった。

それにしても今考えると、このちょっと長めのインターミッションは、"Krystian Zimerman以来 実に30年ぶりの地元ポーランドからの快挙"という Blechacz優勝への序章の時間であったように思えてならない。
 
記念品売り場のコーナーにはまるでトレードショウのようにいくつもの小ブースが並び、楽譜やCD、お馴染みのショパン肖像画の入った文具品、そして宝飾類までもが売られていた。正直あまりにも"キャラクター化"され過ぎな感があるのも否めなかった。ショパンがこれを見たら一体どのように思うであろう…。
そして、30分のインターミッションも終わる頃、あの重低音が数回鳴り響いた。いよいよこの最後の最後。

Blechaczの演奏が始まった。彼の崇高でとてもショパン的な演奏は会場にいる人の多くを惹き付け、第3楽章の頃には彼が優勝することを予測した人はかなりいるのではないだろうか。それほど群を抜いていたものであった。彼の演奏が完全に終了するちょっと前にもう待ちきれず拍手し出す観客がいた。そして割れんばかりの拍手、拍手、拍手…。なんとこの拍手の洪水は5分以上も続いた。この時、観客は皆同じことを考えていたに違いない。
 

3週間に渡って行われたコンクール全ての演奏が終わった。あとは数時間後に発表される結果発表を残すだけ。観客はゆっくりと名残惜しそうにFilharmonia Narodowaをあとにしていった。近くのイタリア料理の店で食事をしたが、頭の中には最後のBlechaczの演奏が頭から離れなかった。一旦ホテルへ。

結果発表 - もう深夜であったがFilharmoniaの周りだけはもの凄い賑わい。
やはり予想通り第1位は Rafał Blechacz. それよりも第2位に該当者無しというのが意外であった。

ホテルに戻ってテレビをつけると数時間前に見たBlechaczの演奏がTVP2で放送されており、速報として "Blechaczゴールドメダル獲得、Krystian Zimerman以来のポーランドからの優勝者"とキャプションが流れていた。

長い夜であった。

 

そして10月23日、受賞者 6 人によるコンサートを観に再び Filharmonia Narodowa に足を運んだ。今回は 2 階席で一昨日までショパンコンクールの審査員席のあった場所辺り。やはり1階席からの眺めとは全然異なり、音に関してもこちらからが良かったように思う。ホールに一番に入ったためまだ誰も来ておらず暫くその場の雰囲気に浸り、2 日前の演奏者たちの熱演を想い出していた。

やがてだんだんと観客が入り始め、どことなく皆リラックスした雰囲気が漂っていた。まずは香港の Ka Ling Colleen Lee の演奏から始まった。そして日本と韓国それぞれ 2 名の入賞者の演奏が終わり、最後に今回のショパンコンクールの覇者、Rafał Blechacz の登場。結構な数の演奏を聴かせてくれたが、やはりとりわけマズルカ、ポロネーズといったポーランドの民俗音楽は素晴らしくずば抜けている。今回のショパンコンクール第1位だけでなく、特別賞であるマズルカ賞やポロネーズ賞も併せて受賞したのことも十分に納得されられる演奏だった。演奏後の拍手喝采も今日もかなり大きく、アンコールも数曲披露してくれた。そして、アンコール最後の曲として Blechacz が弾いたのは意外にもショパンの曲ではなかった。それはドビュッシーの"月の光" あまりの夢心地で天に昇るような感動を得た。予選を含め1ヵ月間続いたショパンコンクールを静かに平和に締めくくってくれ、本当に感謝の思いさえ出てきた。

コンサートが終了した頃はもう11時。日曜であったこともあり、外に出るとどの通りもシーンと静まりかえっていた。どの店も殆ど既に閉店していたが、Nowy Swiat 沿いの行き付けのレストランがまだ開いていたのでそこに入った。人通りの多い Nowy Swiat しかこれまで見たことがなかったが、静まりかえったこの通りも良かった。

今回のショパンコンクールは、久しぶりにポーランド人の優勝という快挙を成し遂げワルシャワは沸きに沸き、そんな壮大なイベントを目のあたりに出来たことは本当に貴重な体験であった。次回のショパンコンクール開催は 2011 年。ちょうどショパン生誕 200 年にもあたる年、充実したさらに素晴らしいコンクールであって欲しいと願っている。

 
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