それから速足でミケランジェロ広場を目指し丘を下った。 日没の空にダヴィデ像のシルエットが浮かび上がるミケランジェロ広場に着き、フィレンツェの街並みの見える方へ。 |
いよいよ陽が沈む頃、空、ドゥオモ、鐘楼、ヴェッキオ橋、家々の色が徐々に変化していき、まるで太陽がもう少し照らし続けたいと名残惜しく言っているが如く感じられ、やがて夜の帳が降りていった。それはあたかも巨大なスクリーンで映画を観ているようでもあった。 ここから見つめていた光景、一生忘れられないものとして僕の心に刻まれている。 |
闇に包まれた街には、灯が燈り始めた。 |
静かにくっきりと浮き立つドゥオモの姿。 |
ミケランジェロ広場をあとにする前に、ダヴィデ像に近付いて行き、その姿を見上げた瞬間、この像が黄金で作られているように見え、自分がまるで オスカー・ワイルドの「幸福な王子」の燕になったような気がした。 | 月の光がダヴィデを優しく照らし、そしてダヴィデはこの偉大な街を見守っていた。 |